ここまでの記事で、なぜ僕がD2Cで事業をおこしたのか。そもそもD2Cとはどんなもので、どうあるべきなのかなど前提的な背景についてご紹介を重ねてきました。
ここからは、自分が実際にどのようにしてD2Cでジュエリーブランドを立ち上げ、展開していったのかをご紹介していければと思います。
ここまでの経緯や、D2Cに関する記事は下記も合わせてご参考ください。
目次・CONTENTS
どんなイノベーションを起こしたのか
僕がジュエリー市場・業界にD2Cブランドでおこしたイノベーションは主に下記です。それぞれの項目をより深く紹介する記事は別途設けます。
- オンライン化されてないジュエリー市場で、平均単価30万円以上のオンラインストアを作ることができた。
- オンラインで全てのサービスの提供を実現し、全国どこからでもジュエリーを楽しめる機会を構築した。
- ジュエリーのポテンシャルを最大化するサービスを開発することで、ジュエリー商材の魅力およびLTVを最大化した
- 上記によってジュエリーの価格のイノベーションを起こし、最適価格(価格の正当性)に徹することで、幅広い層のファンを獲得することができた。
1. 遅れていたジュエリー市場において、D2Cオンライン化に成功
2011年当時、あらゆることがオンライン化されていく中で、ジュエリー業界および市場はほとんどオンライン化がされていませんでした。
当時の業界内のイメージは、「ジュエリーという高単価な商材は路面店など店舗型でしか売れるわけがない」というものが根強く残っていたのです。
確かに自分自身ユーザー側で考えても、数万円、数十万円以上もするジュエリーという商品をオンラインですぐに買えるかというと厳しいという印象でした。しかしそれはあくまで既成概念に基づくもの。逆に考えれば、ジュエリーの消費活動をいち早くオンライン化することに大きな意味と価値があるというものでした。
創業からモバイルサイトを構築し、オンラインストアでの販売を軸に展開しました。蓋を開けてみればこの判断は大成功。当時ワンルームマンションで始めたにもかかわらず、初年度から平均単価30万円、数百万円を超える月商を安定化させることができました。(初年度の最高月商は約500万円でした)
大きな理由の1つは明確で、ユーザーが求めていたということです。
実店舗じゃなきゃいけないというのは提供者側の遅れた先入観だったということで、ユーザー側はオンラインでのジュエリー消費を求めていたということです。
2. オンラインでジュエリーに関する全てのサービスを提供
とはいえ、ただジュエリーをオンラインストアで販売しただけではイノベーションとはいえません。僕が行ったのは、ジュエリーに関するあらゆるサービスをオンラインで提供し、全国いつでもどこからでもジュエリーに関するあらゆることを利用できるようにしました。主に下記のようなことです。
- 全ての修理・メンテナンスサービス
- 全ての保証プログラム
- オリジナルデザインのサービスや提案 等
ジュエリーブランドに関するサービスをいつでもどこからでも受けられるようにすることで、結果として購買欲の喚起に大きく寄与することとなります。それまで、例えば楽天とかでジュエリーを購入したとしても、その修理やメンテナンスは店舗に行かなければいけなかったりと、オンラインで購入しても結局は店舗のある場所に依存せざるを得ない状態が普通でした。
しかし購入後および購入にあたるサービスを全てオンラインで全国どこへでも提供することで、ユーザビリティが飛躍的に向上し、近くに宝石店がないエリアに住んでいる方などより幅広い方々にジュエリーの楽しさを提供することを可能にしたんです。
これまでジュエリーに興味があったけれど、なかなか店舗までいくハードルをクリアできなかった方が、サービスが充実していることで購買動機へと大きく進んでくれたのです。
3. ジュエリーのポテンシャルを最大化するサービスを開発し、提供した。
そして僕はジュエリーのポテンシャルを最大化するかつてないサービスを開発し、提供しました。
これに関しては別記事で詳しくご紹介したいと思うので、今回は表面的な部分にとどめておきます。簡単にご紹介すると、
ジュエリーがこれまで売り切りの商品だったものを、貴金属と宝石という永久に再活用できるジュエリーの素材に着目し、一度購入したものを活用して次の新しいジュエリーを作れたり、下取りできるサービスを実現しました。さらにそのサービスをオンラインで全て提供できるように実現しました。現時点でもD2Cジュエリーブランドでこのサービスを行っているのは、国内外でEIKAだけです。(当社調べ)さらにこのサービスは特許も取得しています。
このサービスによって、ジュエリーが持っていたLTVのポテンシャルを最大化することに成功しました。
4. 価格のイノベーションを実現した、適正価格に徹した
世の中のあらゆるジャンルの商品やサービスが適正価格へと進み、価格革命がおこっていく中で、ジュエリーにおいてはそれが起こっていませんでした。
ここでいう適正価格とは、ただ安くしたよ。ということではなく、商品やサービスの設計、さらにはそれらを包括的に取り巻くビジネスモデル全体の設計に至るまであらゆる無駄をなくし、価格設計そのもののモデルや考え方を見直し、より進化した価格の概念というものです。ただ安くして利益率をさげるのは誰だってできますが、それでは新しい魅力的な商品やサービスの開発ができなくなっていき、結果としてユーザーにとっての不利益につながることになりますからね。
オンライン化することで、それまで実店舗型だったジュエリーのコストを減らすことができたり、サービスのオンライン化やより継続的に楽しめるサービスの提供を開発し提供することで、顧客との継続的な関係の構築に成功し、定価設定を落とすことに成功したのです。
オンライン化が進む時代の中で、価格比較が容易になったわけですが、安さやお得!というようなことをしなくても、しっかりと適正価格に取り組み展開することで、自然と顧客が比較して選んでくれるようになったのです。
完全ユーザー視点に徹することができたから、実現できた
では当時なぜ誰もができていなかったことを、突然に外部から創業した僕ができたのでしょうか。それはD2Cだからです。
顧客と直接繋がり続ける道(ビジネスモデル)を選択したことで、常にユーザー視点に徹することができたからです。
商品やサービスの開発は、全てユーザーにとってどんなものにする事が良いのか。というルールで設計し、例えそれが困難だったとしても実現しなくてはならない。というルールで向き合い続けました。
高額な商品を実店舗ではなく、オンラインで名も知られていないブランドが売れるわけないという既成概念があっても、オンラインで実現し、より多くのお客様に喜んでもらえるためにはどうしたら良いかという向き合い方をしました。
これらは、顧客と直接つながるD2Cブランドではなく、いわゆる通常のB2Cで卸売などを軸とし、中間業者が介在していたりすれば、おそらく無理だったと思います。
自分たちが最もユーザー視点でい続けられるD2Cだからこそ、これからのジュエリーブランドのあるべき姿をしっかりと想像し、それを形にすることがしやすくなったわけです。
ユーザー側のメリットを最大化することに徹することで、結果それがイノベーションを起こす最短ルートとなった事例でした。それでも実際に初年度は不安ばかりでしたが、オープンしてからすぐに大きな反響を得ることができたことで、それが確信に変わり、その道を信じて進むことができたのは、非常に嬉しい出来事でした。
ビジネスにとって、『入り口の入り方』はとても重要だと思います。
入り方でその後の道のりが大きく変わっていくからです。
より変化し、より最適化していくことが強いビジネスの要素であると僕は信じています。
D2Cはそういう要素を入り口からぶれることなく提供してくれる入り方でもあったといえるでしょう。